医者も知らない医学の新常識

気温が急に上がると盲腸が増える? 米国68万人のデータを解析

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 急性虫垂炎(盲腸)は、お腹の感染症として非常に馴染みのあるもので、お腹の右下の部分が強く痛んで熱が出るのが典型的な症状です。昔は手術をして盲腸を切除するのが一般的な治療でしたが、最近では軽症のものは抗菌剤(抗生物質)を使って治まれば、手術はしないことも多くなっています。

 盲腸が多い季節はいつでしょうか?それは夏であるというのが、これまでに報告されている答えで、日本だけでなく海外でも冬より夏に盲腸が増えるというデータが多く見られます。「流行する腸の感染症に原因がありそうだ」とか、「気圧の変動が影響するのではないか」とか、いろいろと仮説はあるのですが、正確な原因は不明です。

 今年の米国医師会関連の医学誌に、アメリカで盲腸の患者68万人以上を調査した、非常に大規模な研究結果が発表されています。それによると、気温が上昇するにつれて盲腸が痛む人は増え、特に気温が通常より上昇した時に、患者さんは目立って増えている傾向がありました。

 どうやら盲腸は季節によってその頻度が変わるのではなく、気温が上昇すると増加する病気であるようです。寒暖差が激しく体調を崩しやすい時期ですが、季節外れに気温が高い時には、お腹の痛みにも注意をした方がよさそうです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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