今冬は「フルロナ」にご用心!

 今年もインフルエンザが世間を騒がせる季節が近づいてきた。日本ではここ2年間続けて流行していないことで、この冬も大丈夫だと安心している人が多いに違いない。しかし、実際にははたしてどうなのか? 専門家に聞いてみた。

■今年はインフルエンザ流行の可能性あり

「今年、日本でインフルエンザが流行する可能性はゼロではなく、むしろ大いにありますね。少なくとも起こりやすい環境と要因が去年以上にありますから」

 というのは感染症に詳しい、東京歯科大学市川総合病院呼吸器内科の寺嶋毅教授だ。

 寺嶋教授がそのように予測をするのには3つの根拠がある。1つはオーストラリアや南アフリカ、チリなど日本とは季節が逆になる南半球の国々で、冬にあたる今年5月から8月にかけてインフルエンザの感染者数が去年に比べて確実に増えていること。2つ目は最近になって海外からの入国制限が緩和されたため人の移動が激しくなっていること。そして3つ目は、ここ数年インフルエンザが流行していないことから個人も社会も免疫力が低下している状態にあるということ。いずれにせよ、インフルエンザが流行してもおかしくない状況といえるだろう。

 さらに寺嶋教授は、

「以前に比べてコロナが落ち着いてきたためでしょうか、マスクの着用や人の移動などのコロナ対策が以前に比べて緩くなってきたような気がしますね。こうなってきますと、インフルエンザへの感染がますます懸念されます」

 と警鐘を鳴らす。

■まだまだ油断ができない新型コロナ

 では一方、インフルエンザと同じ感染症である新型コロナはどうなのか? ここに来て感染者数が減少しており、ようやく沈静化してきたような印象もないことはないが、世界中の人々を長く苦しめてきた新型コロナも、はたしてこのまま終焉を迎えることになるのだろうか? 重ねて寺嶋教授に聞いた。

「全国的に感染者数が減ってはいますが、まだまだ油断はできないでしょうね。ドイツやフランスのようにいったん感染者数が減ってもまた増えてきている国もありますし、オミクロン株のような、ワクチンを接種してできた抗体が以前より効きにくいタイプの変異株が突然生まれる可能性もあります。ですから、終わりに近づいたということはないと私は見ています」

東京歯科大学市川総合病院 呼吸器内科 寺嶋毅教授

■「フルロナの魔の手」から逃れるには…

 新型コロナウイルスが依然として感染拡大を続け、その一方でインフルエンザが流行するとなると心配になることがある。それはインフルエンザと新型コロナの重複感染、いわゆる「フルロナ」が起こるのではないかということだ。その点を寺嶋教授は、

「それは十分にあり得ますね。実際、新型コロナの流行が始まった2020年の春頃にはそうした報告がいくつかありました。ただフルロナが起こった場合どうなるのかという点については、症状がより重症化したという報告もあれば、そうでもなかったという報告もあって一定の結論はまだ出ていないというのが現状ですね」

 と説明する。

 本格的な冬に向かうこれからの季節、フルロナの魔の手から逃れるためには各自がしっかりと予防するしかない。それには新型コロナとインフルエンザのワクチンをきちんと接種した上で今まで通りマスクの着用を徹底し、うがいや手指の消毒をまめにすること、そして、できるだけ人混みを避けるようにすることが大事なのはいうまでもない。

■免疫力を高めてフルロナに打ち克つ!

 さらに、こうした外面的な予防もさることながら、体の中からの内面的な予防も忘れてはいけないと寺嶋教授はアドバイスする。

「フルロナに打ち克つには体の防御システムである免疫力を高めることが大切です。それには睡眠を十分に取り、ストレスをため込まずにバランスのいい栄養を3食しっかり取る習慣を身につけることです。食品では発酵食品、特に腸内細菌のバランスを整えてくれるヨーグルトがオススメですね。手軽に摂取できるので、私も毎日取り入れるようにしています」

 ヨーグルトはさまざまなタイプのものがあるが、中でもR─1乳酸菌を使用したヨーグルトでは免疫を活性化し、感染予防に役立つといったことも報告されている。

 この冬、インフルエンザが流行るか流行らないかは分からない。それでもフルロナに感染してつらい思いをしないために、今からしっかりと対策を考えておくに越したことはないだろう。

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