Dr.中川 がんサバイバーの知恵

大腸がんの罹患率や死亡率 生活習慣の影響は遺伝的影響を上回るのか?

2021年、大腸がんで手術を受けたことを報じられたペレ(C)ロイター

 ただし、気になるのは、2日に公表された呼吸器感染症。病院側の発表ですから、感染が事実とすると、免疫状態がよくないと思われます。82歳という年齢からも、かなり進行しているのではないでしょうか。一部で指摘されている緩和ケアの導入は、現実的な選択肢だと思います。

 さて、大腸がんの人種差についてご紹介しましょう。米国で人種ごとに大腸がんの罹患率や死亡率について調べた研究があります。それによると、黒人と白人で罹患率も死亡率も格差が大きいことが示されました。罹患率は黒人が白人に比べて20%高く、死亡率は同40%です。

 しかし、遺伝的に同一なアフリカの黒人は、少ない。一方、日本は今、大腸がんが急増していますが、少なかったころの日本人のうち、ハワイに移住した日本人は白人以上に大腸がんが多いと報告されました。

 大腸がんは生活習慣病的な一面があり、肉や脂っこい食事など欧米型の食生活が良くないことが分かってきました。そこに着目すると、人種差などを背景とする遺伝的な影響と悪い生活習慣の影響では、ひょっとすると後者の影響が大きいのかもしれません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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