その中には有名な作家もいました。「南総里見八犬伝」を書いた滝沢馬琴です。旗本用人の五男として生まれた馬琴は、30歳から本格的な創作活動に入った遅咲きの作家です。ご存じの方も多いでしょうが、滝沢馬琴は八犬伝を書いている途中で失明し、息子夫婦への口述筆記により作品を完成させています。失明するまで馬琴はメガネを使っていました。馬琴が買い求めたメガネの値段は1両1分だったそうです。息子で医師の宗伯も目が悪く、2人で同じメガネを使っていたという見方もあります。
いずれにせよ、江戸時代のメガネは高価ではあったものの、収入があり、手に入れる意思があれば庶民であっても一家にひとつは備えつけることができた、ということかもしれません。
(メガネウオッチャー・榎本卓生)
メガネを語る