健康長寿のカギは腎臓にあり

慢性腎臓病の食事療法 「野菜・果物は摂取控えめ」という考え方が変わってきた

野菜や果物は状況に応じて制限する方針に

 ただ、ここ数年、この制限は慢性腎臓病の患者さんすべてに当てはめる必要はないのではないかという考えも出ています。たとえば、慢性腎臓病の患者さんは便秘に悩む人が多い。これは、野菜と果物を調整したことで食物繊維が不足しているからではないかとみられています。

 慢性腎臓病の患者さんは、本来尿で排出されるはずの毒素が体内にたまりやすい。排便で排出したいところですが、食物繊維不足で便秘になると毒素は体内で滞ってしまう一方になる。当院ではすべての患者さんに一律に野菜・果物制限をするのではなく、状況や採血結果に応じ、特にカリウムが多く含まれる野菜・果物から順々に制限するという方針をとっています。

 最後に「タンパク質」の制限について。タンパク質は筋肉などをつくるのに欠かせない材料ですが、多く摂取すると尿毒素などの不要な老廃物が体内に増えてしまいます。腎機能のステージによっては、これらの老廃物が体内にたまっていきやすくなる。

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森維久郎

森維久郎

三重大学医学部卒業。日本腎臓学会専門医。2020年5月、腎臓内科、糖尿病内科、生活習慣病の診療に特化したクリニックを開院。腎臓について伝える情報サイト「腎臓内科ドットコム(https://jinzonaika.com/)」を監修。

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