医療だけでは幸せになれない

「正しい情報」のあいまいさ…バイアスが情報をゆがめる

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 バイアスはデータを集める際と分析する際の両方で考慮する必要がある。バイアスをできるだけ避けながらデータを集め、バイアスをできるだけ考慮した分析を行う必要がある。その配慮がなければバイアスまみれの情報で、個別の判断に役立つどころか混乱を招くだけかもしれない。

 さらにやっかいなことには「バイアスをかけて都合のいい結果を出すことも可能だ」という決定的な問題がある。

 バイアスを避けて正しい情報を得ることは、バイアスを意図的にかけて誤った情報を生み出すことと表裏一体である。捏造や改ざんなど不正をしなくても、表面化しないようなバイアスをかけて都合のいい結果を出すようなことがしばしば行われている。

 マスク着用の効果についての議論を見ていると、効果ありという人もないという人にも、そういう傾向が見られる。結論ありきから、それに都合のいいデータを生み出すというのは、あらゆる状況で避けがたい根本的なバイアスのひとつなのだ。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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