医療だけでは幸せになれない

「統計学的検討」の指標はさまざま 何が起きているかをどう表現するか

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 前回、デンマークのマスク推奨の効果を検討したランダム化比較試験について書いた。今回もその続きである。1カ月間のコロナ感染症が、マスク推奨群で1.8%、非推奨群で2.1%という結果であったが、この結果をさらに詳細に検討しよう。

 この際まず考えることは、この1.8%と2.1%という数字そのものの妥当性である。さらに2.1-1.8=0.3%と差をとれば、この0.3%の減少の妥当性である。

 ここで検討すべきが「真実、バイアス、偶然」のうちの「偶然」である。この研究に参加したのは、デンマーク人の中でも仕事上マスクをすることがなく、3時間以上を自宅外で生活するという人のそのまた一部である。その一部の人たちでの結果として、それぞれのグループでのコロナ感染症の発生が1.8%と2.1%ということであるが、もう一度同じ対象者から別の参加者を集めて検討したら、また違った結果になるかもしれない。さらにそうした研究を繰り返して行うと、どれくらいの幅に収まるのかどうかを検討しなければ、一度の結果でどうこう言うのはむつかしいという面がある。そこで登場するのが「統計学的検討」である。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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