老親・家族 在宅での看取り方

患者のわがままに振り回されつつも在宅医療を進めていく

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「ケアマネジャーさんに聞きますね。ところで採血は最近しました?」(私)

「していないね。嫌なんだ採血。痛いし」(患者)

 この患者さんの最優先は、健常時からの友人との付き合い。自身の生活スタイルへのこだわりもかなりある様子。金銭的には余裕があり、体が不自由になった今もひとりで街に出かけたり、気ままに年1回程度は新幹線に乗って旅行にも行かれます。

 事前に行われた担当者会議では、さまざまな話が……。訪問マッサージを知らないうちに解約する。訪問リハの突然のキャンセルが多い。緊急電話で頻繁に訪問看護の時間が変更される。ヘルパー介入は断り、ゴミ出しも必要ないと言う--などなど。各方面から、この方のわがままに振り回されているエピソードが噴出しました。

 認知症とはいかないまでも、感情や衝動の抑制が低下しているのはあきらか。ただ、私の診察時は、礼節をある程度保ち、接してくれる。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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