がんと向き合い生きていく

介護はもう無理だと思う…87歳の夫を看る85歳の妻の告白

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 数日後、息子はペースメーカーを入れない方向でお願いしたようでした。それでも、杖を使ってトイレまで行けるようになったそうです。そして、夫は「家に帰りたい」と話すようになったそうです。

 息子は、2週間後には退院して家に帰されるような話をしていました。たとえ、週2回とかヘルパーさんが来てくれて助けてくれたとしても、24時間、ずっと私は大変です。もう、私は85歳なのです……。

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 奥さんからこの話を聞いた私は、実際の状況は分からないとはいえ、高齢社会はがんを解決できても、きっと年をとるごとにたくさんの合併症が重なり、がん以外のことで悩まれる方も多いのだろうと思いました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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