がんと向き合い生きていく

「がんになりやすい性格」というものは本当にあるのだろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 Gさんは昼休みの時間に、会社の屋上で缶コーヒーを飲みながら、亡くなった上司のFさんを思い出していました。

「Fさんは膵臓がんで、わずか1年間の闘病だった。みんなから好かれ、とても良い方だった。部下のことを一生懸命考えてくれた。私たちが苦労をかけ過ぎたのではないか……。それにしても、みんなの話をよく聞いてくれた。きっと、会社との間でストレスが多かったのだろう。酒の量も多かった。たばこの量も多かったな。あんないい人が……考えられない。いま、ここにひょっこり現れそうだ。ストレスが、がんの進行を速めたのではないだろうか? 奥さんは、娘さんは、どうしておられるだろうか?」

「どうも、転勤してきた今度の上司と私はうまくいかない。だいたい、仕事の量が増えた。文句も言いにくい雰囲気だ。翌朝は早いのに、夜遅くまで残業だ。この生活、いつまで続くのか? 肩は凝るし、空腹になると上腹部がきりきりする。どうも胃の調子が悪い。来週、会社を休んで診療所へ行こうかな」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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