感染症別 正しいクスリの使い方

【ステノトロフォモナス・マルトフィリア】“切り札”として使われる抗菌薬が効かない要注意の耐性菌

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 血管血圧測定機器、呼吸器系装置、透析機器、コンタクトレンズ、精製水、消毒薬、浴槽などの汚染を介して病院感染を起因にした例が多く報告されています。Pseudomonas属である緑膿菌とは、伝播経路、抗菌薬耐性など類似点も多く、注意が必要であると考えられます。

 ステノトロフォモナス・マルトフィリアは、感染防止目的でβ-ラクタム系抗菌薬を長期にわたって使用することにより、菌交代現象で検出されることが多いともいわれていて、最も大きな特徴は、ペニシリン系、セフェム系、カルバペネム系といったすべてのβ-ラクタム系抗菌薬が効かないことです。特に多くの感染症において切り札的に用いられるカルバペネム系抗菌薬までもが効きません。

 ですから、感染時の治療では、カルバペネム系薬剤への耐性に注意する必要があります。第一選択薬はST合剤とされていて、他にはミノサイクリンやニューキノロン系薬が有効なケースもあるようです。

 教科書的には習っていても、薬剤師になって医療現場で初めてこの細菌を見かけたときには、「本当にカルバペネム系抗菌薬が効かないんだ!」とびっくりしました。その後も現場で時折見かける細菌なので、常に注意をしています。

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荒川隆之

荒川隆之

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

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