老親・家族 在宅での看取り方

65歳の肺がん患者「絶対に治したいと手術も抗がん剤も頑張ったが…」

写真はイメージ

 ただ、入院期間中に食事ができなくなってしまったのが大きかった。体重は70キロから45キロまで落ち、自分では歩けなくなってしまったのです。7月上旬には緩和ケア目的で、都内の別の病院へ転院となりました。

 緩和ケア病棟では「なにもしない」治療が中心となります。栄養状態を改善する治療もありません(当院では、この部分も力を入れます)。

 そのため、体重はさらに減少。息苦しさに対する薬が増えると眠くなる症状も出てくるので、一日中寝て、起きているのは、周囲から起こされた薬の時間だけ。

 そこで、家族との話し合いになりました。男性が、ご家族に訴えました。

「がんに打ち勝つために、入院して、手術を受け、きつい抗がん剤治療を頑張った。5月に苦しくなった時も治すつもりで国立がんセンターに入院した。しかし結果としては痩せて、骨と皮みたいになってしまった。今の病院では治療につながることは何もしてくれない。それなら、ここにいても仕方がないのではないか。しかも病院だから、好きなたばこを吸えない。看護師には『(病気は)たばこを吸っていたからだ』と言われる」

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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