老親・家族 在宅での看取り方

65歳の肺がん患者「絶対に治したいと手術も抗がん剤も頑張ったが…」

写真はイメージ

 介護に不安を持っていた家族も「お父さん、帰ってきていいよ」となり、7月末に急きょ退院、在宅療養開始となりました。

 自宅では、ご本人はお気に入りの茶の間に介護ベッドを置き、リラックスして休んでおられました。私たち在宅医療チームは男性の栄養状態を支えるためにさまざまな方法を実施。少しではあるものの体重が増えました。ご本人の希望で、リハビリの理学療法士の先生も定期的に来られることとなりました。

 ご自身の「こうしたい」を実に忠実に過ごされる日々。私たちも精いっぱい応援します。予想より長く4週間も自宅で過ごし、最期は笑顔で息を引き取られました。

 奥さまが「最後までやりきれて本当に良かったです。在宅医療チームの皆さんのおかげです」とおっしゃってくれましたが、ご家族が横で支えてくれていたからこそ、ご本人も頑張れたし、私たちも訪問を継続できたのです、とお伝えしました。いつもよりセミの鳴き声のする暑い夏の日でした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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