年間1万6300人超ペース「梅毒」が引き起こす「目」の病気…視力障害の引き金に

「注射で治る」と甘く見てはいけない

 相変わらず梅毒感染が止まらない。国立感染症研究所が8月29日に発表した感染症発生動向調査週報速報33週(8月14~20日)によると、報告された梅毒の新規感染件数は168件、年初からの累計は9482件となった。前年同期の累計は7525件だったことから26%増となり、このままのペースで増え続けると年間累計は1万6300件超となる計算だ。皆さぞかし感染に神経質になっているかと思えばさにあらず。「梅毒になっても昔みたいに何度も通院しなくても1回の注射で治る持続性ペニシリン注射剤がある。心配することないよ」と甘く見る人がいるが、これは間違いだ。たとえば、梅毒はさまざまな目の病気(梅毒性眼疾患)を引き起こし、視力障害の引き金になることもある。自由が丘清澤眼科(東京都目黒区)の清澤源弘院長に話を聞いた。

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「梅毒性眼疾患は、梅毒の病原体である、トレポネーマ・パリドウムが目に感染したときに発症する目の病気です。梅毒の症例の2.5~5%と報告されていますが、臨床症状が多彩で特徴的な所見に乏しいため、実際にはもっと多いのではないか、と思います。病原体は目のあらゆる組織を侵して、結膜炎や硝子体炎、網膜血管炎、網脈絡膜炎、視神経乳頭炎、滲出性網膜剥離、網膜中心静脈閉塞、強膜炎などを発症します。そのため、海外では『偉大な仮面舞踏会』とも呼ばれています」

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