医者も知らない医学の新常識

立つと低血圧になる人でも高血圧治療は必要? 米国医師会雑誌に論文掲載

薬の使用は慎重に

 高血圧には動脈硬化を進行させ、心臓病や脳卒中などの病気を増やすリスクがあります。そのため、血圧が高い人は薬を飲んで血圧を下げているのです。しかし、その一方で血圧が低い低血圧にも健康上のリスクがあります。低血圧は転んだり骨折したりするリスクを高め、そのため健康寿命にも悪い影響を与えるといわれています。

 低血圧の中には、座っている時は正常なのに、立ち上がると急激に血圧が低下する「起立性低血圧」という種類があります。これは自律神経の影響が大きいといわれていますが、立ち上がって3分以内で、上の血圧が20㎜Hg以上も低下するのです。当然、めまいや転倒のリスクがあります。

 厄介なのは、座って測ると高血圧なのに、立ち上がると低血圧になる場合です。こうした高血圧の患者さんには、血圧の薬を使った方が良いのでしょうか?

 今年の米国医師会雑誌に掲載された論文によると、これまでの臨床研究のデータをまとめて分析した結果、起立性低血圧を伴っていても、高血圧の患者さんには血圧を下げる治療をした方が、心臓病などの病気のリスクを下げ、生命予後にも良い影響を与えることが確認されました。ただ、めまいなどの副作用は多いことが予想されますから、薬は慎重に使った方が良いようです。高血圧と診断された時には、起立性低血圧がないかどうかを、必ず確認することが必要なのです。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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