老親・家族 在宅での看取り方

「特別訪問看護指示書」の提出で週4回以上の訪問看護を受けられるようになる

原則に縛られない柔軟な対応が求められている

 卵巣がんは末期ではなく、53歳という年齢もあって介護保険は適用されず、医療保険を利用。自己負担額は、この女性の場合、4万円以下となりました。

 病気で仕事ができない状況で4万円を払い続けるのは精神的に負担を感じる額ですが、ご自身にとって入院よりははるかにリーズナブルな選択だったのでしょう。

 それでもやはり、いつまで金銭的に持つかといった不安で心労を募らせていっているご様子。介護保険は使えなくとも訪問看護サービスを十分に活用してもらうため、「特別訪問看護指示書」を出すことにしました。

 医師が訪問看護の必要性を判断し、この「指示書」を出せば週に4日以上の訪問が可能となり、通常より頻繁な訪問看護を受けることができるようになります。

 それによって患者さんは毎日訪問看護サービスを受け、医療用麻薬の管理や衛生管理を受けられるようになりました。その後、生活保護の申請が通ったことから、医療費の負担はなくなりました。

 原則に縛られない柔軟な対応が最後のとりでである在宅医療に求められています。制度の網から漏れそうな患者さんを救いあげることも、在宅医療の大切な仕事だと考えています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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