老親・家族 在宅での看取り方

大腸がんの60歳男性「1人で家にいて繰り返す吐き気が精神的につらいんだよ!」

途中で入院を希望することも(写真はイメージ)

 60歳で独居の男性が、在宅医療を開始されました。大腸がんで、さらにがんが大腸の外側の腹膜にまで散らばっているステージ4。主治医から今後の見通しを告げられ、「最後は慣れ親しんだ自宅で過ごしたい」と、私たちのところへ連絡があったのです。

 相談があった時点では、立ち上がる時などに多少ふらつくものの、自力歩行が可能な状態でした。手術で直腸と肛門を切除しているため、人工肛門を造設しており、排泄物を受け止める専用の袋(パウチ)を取り付けていましたが、その交換も補助があればご自身でできるとのこと。

 事前の申し合わせでは、さまざまなことを確認しました。例えば「お風呂はベッドバス(全身清拭)で、元気な時はシャワー」「疼痛管理は2種類の麻薬で様子をうかがいながら開始」など。

 もしもの時についてもしっかり話し合い、「延命はしない」「食事をできなくなった時には、本人と相談の上で高カロリー輸液の点滴である中心静脈栄養に切り替える」「何かあった場合の緊急連絡先は、土日夜間を除き、生活保護のケースワーカーにする」「妹さんへの連絡は、亡くなってから。危篤時は連絡しない」と取り決めました。ただし、これらはご本人の希望でいつでも変更できるとも、伝えました。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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