高齢者の正しいクスリとの付き合い方

尿で排泄されるクスリは腎機能が低下しているとリスクが高まる

腎臓の機能低下は加齢に伴う生理機能低下でも起こる

 腎臓の機能低下は疾患によっても起こりますが、加齢に伴う生理機能の低下によっても起こります。というのも、腎臓の機能を左右する要因のひとつである腎血流量が、加齢に伴い低下する傾向にあるからです。腎臓の中には糸球体という濾過(ろか)装置のようなものがあるのですが、この糸球体での濾過は血液の圧力=血流量に依存していることから、加齢に伴い腎臓の機能はどうしても低下していくのです。

 肝臓での代謝と異なり、腎臓から排泄されるクスリについては腎臓の機能ごとに適切な投与量についての明確な指標があります。ですので、普段、われわれ薬剤師が処方箋を取り扱う際には腎臓の機能にも細心の注意を払っており、この指標から逸脱した投与量になっていた場合には、必ず処方した医師に疑義照会(処方内容で疑わしいところを確認すること)しています。

 腎臓を介して尿中に排泄されるため投与量に注意が必要なクスリはたくさんあり、代表的なものとして抗菌薬が挙げられます。ほかに一部の鎮痛薬や抗凝固薬なども該当しますし、意外なところだとH2ブロッカーという胃薬も注意が必要です。

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東敬一朗

東敬一朗

1976年、愛知県生まれの三重県育ち。摂南大学卒。金沢大学大学院修了。薬学博士。日本リハビリテーション栄養学会理事。日本臨床栄養代謝学会代議員。栄養サポートチーム専門療法士、老年薬学指導薬剤師など、栄養や高齢者の薬物療法に関する専門資格を取得。

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