老親・家族 在宅での看取り方

慢性腎臓病の50歳男性「墓参りで死んだ両親に会ってきた。早くそっちに行きたい」

ギリギリまで食べたいものを食べ、喫煙も…(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

 足に血豆ができた時のこと。

「ちょっと診せてください。前回も同じ場所にできて、再発した感じですね。処置しますね」(私)

 まずは滅菌蒸留水で洗浄してから、褥瘡(床ずれ)や皮膚潰瘍などの治療に用いられる薬(フィブラストスプレー)を塗布。そして患部の雑菌を殺し、傷の治りを早くする軟膏(イソジンシュガー)を塗り、ガーゼとパッドで保護します。

 適宜に訪問看護と連絡を取り、内部から表面にしみ出てくる滲出液がある時は、保護されているガーゼ交換時の写メを送ってもらって様子を確認するなど、細かいケアに努めました。

 当院介入から2年が経過したころには頻繁に嘔吐するように……。体重が減り大きかった体が小さく細くなって、確実に衰えが進んでいることが見て取れました。

 そうして並行して入退院を繰り返しながら1年。何回目かに退院したある日、自宅で時々意識を失うようになるということで、往診に伺った時、そのまま息を引き取られました。

 最期のギリギリまで、生きている証しのようにして、食へのこだわりを捨てず命を全うされた患者さんでした。そんな患者さんへ、フットケアをはじめとしたきめ細かいサポートは、在宅医療ならではの寄り添い方だと言えると考えています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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