この心房縫縮の延長線上にあるのが、以前から私が行っている「左心耳」に対する処置です。心臓手術後に起こる心原性脳梗塞を予防します。先ほども触れましたが、心臓手術の後は心房細動を起こしやすくなります。心臓が細かく不規則に収縮を繰り返すため、心臓内の血流が悪くなって血栓ができやすくなります。その血栓が移動して脳の血管で詰まると、脳梗塞が起こるのです。
それを防ぐのが左心耳への処置になります。心臓手術に付随して、左心房の上部にある左心耳という袋状に突起した部分を切り取って縫合する「左心耳切除術」や、糸で縫い縮める「左心耳縫縮術」を行っておけば、抗凝固薬を服用するよりも40%以上有利に脳梗塞を予防することがわかっています。
高齢者の再手術を多く手掛けるようになってから、初回手術の際に再手術まで考慮した処置を行うことの重要性をあらためて実感しています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」