上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

再手術でリスクになる「心房の拡大」は縫い縮めておけば回避できる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 これまで、高齢者の心臓の再手術における“ハードル”についてお話ししてきましたが、もうひとつ大きなリスクになるのが心臓の「拡大」や「肥大」です。

 そもそも心臓は、「大きい」こと自体がリスクになります。一般的に大人の心臓は左右の握りこぶしを胸の前で合わせた大きさで、右が右心系、左が左心系になります。しかし、心機能が衰えるなどのトラブルがあると、不具合をカバーして全身に血液を送り込む力が必要になり、大きくなっていきます。

 胸郭の幅に対し、心臓の幅が50%以上を占めているケースを「心拡大」といいます。60%を超えてくると息切れなどの症状が顕著になってくることが多く、慢性的な出口の狭窄では心筋への負荷から肥大が起きて、心肥大が拡大へとつながります。一方で、心室機能の低下が起きると血流の停滞から心房圧が上昇して内径が広がり、心房の筋肉も薄くなって心房細動を来すことも多くなります。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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