上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

高齢者の再手術は初回からの期間が短いと「癒着剥離」の難度が上がる

天野篤氏

 2020年にいわゆる定年で主任教授を辞し、大学の理事兼特任教授となってから、およそ3年半がたちました。かつてに比べると件数は減りましたが、いまも病院で現役の外科医として手術を続けています。このところ、主に執刀しているのが「高齢者の再手術」です。

 心臓手術の多くは“賞味期限”があります。たとえば、冠動脈バイパス手術でバイパスとして使う血管の耐久性は、足の静脈であれば「およそ13~15年」といわれています。内胸動脈を使えば一生もつこともありますが、その間に他の冠動脈狭窄が進むケースも多く、再手術がゼロにはなりません。また、心臓弁膜症で弁を交換する手術で使われる生体弁は、35歳以上では15~20年くらいで硬くなったり、穴が開いたりして、再び交換しなければなりません。

 いずれも、患者さんの持病や全身状態、生活管理の状況によって変わってきますが、最初の手術からそれくらいの年数が経過した時点で、再手術が必要になるケースが少なくないのです。ほかにも、初回の手術とは別の心臓トラブルが起こって再手術が必要になる場合もあります。

1 / 6 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事