こうした事態は、手術前の検査で予想できるものもありますが、事前にははっきり分からず、いざ手術してみたら……というケースも少なくありません。それだけ外科医の経験や力量が求められます。
このように、行うべき処置が増える分、人工心肺装置をつなげて心臓を止めている時間も、手術そのものの時間も長くなるので、患者さんの負担は大きくなります。切除する箇所が多くなれば、それだけ出血のリスクも高くなります。もしも出血が起こったら、また新たな対処が必要です。
また、心筋保護が不十分になるリスクもアップします。一時的に心臓を停止させて行う手術では、心筋保護液という特殊な液体を心筋に注入して心筋を保護する処置が欠かせません。心筋保護が不十分だと心筋細胞が障害され、術後に血流を再開しても心臓の収縮が不良で心機能が戻らなくなってしまうのです。そのため、手術中にはより慎重な心筋保護を実施しなければならないうえ、術後の循環管理や輸血管理など、初回の手術に比べて濃厚な処置が必要になる場合もあります。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」