正解のリハビリ、最善の介護

医者が脳梗塞で失語症に…どんなリハビリで回復できるのか?

ねりま健育会病院院長の酒向正春氏(提供写真)

 50代の男性医師、Cさんのお話です。

 ある朝、起床してから、母親に贈るための“母の日カード”にメッセージを書こうとしました。しかし、「母の日おめでとうございます」と書くつもりが、文字がまったく浮かんできません。「母」の単語が出てこないのです。さらに、ろれつが回りません。ただ、手足は動いたので、妻に手ぶりで言葉が出ないことを知らせ、大学病院の救急センターに連れて行ってほしいと伝えました。

 救急センターでは、麻痺はなく歩くことはできましたが、話すことができません。緊急MRI検査が行われ、「急性期脳梗塞」と診断されてSCU(脳卒中集中治療室)に入院となりました。

 脳梗塞は、脳の血管が詰まって血流が途絶える病気です。幸い、Cさんの急性期治療は、カテーテルを使って血栓を取り除く脳血管内手術という侵襲的な治療は必要なく、血栓を溶かす薬の点滴と内服治療だけで治療ができるという方針になりました。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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