医者も知らない医学の新常識

睡眠ホルモン「メラトニン」で感染症の悪化が予防できる?

写真はイメージ

 風邪をひくと睡眠時間が長くなり、眠った分だけ体が回復した気分になるものです。その一方で熱があって体調が悪い時に、睡眠時間が短いと、より病状が悪化した気分になります。これは気のせいでしょうか?

 じつはそうではありません。睡眠をしっかりとることで、体の免疫の状態は健康に保たれ、それだけ病気からの回復も早くなるのです。ただ、その原因は正確に分かっているわけではありません。

 今年の呼吸器病の専門誌に、興味深い研究結果が報告されています。慢性の呼吸器病を持つ患者さんが、インフルエンザや新型コロナなどの感染症に罹ると、その病状が急激に悪化することが知られています。呼吸器病の実験動物のネズミを利用して、そこにインフルエンザウイルスを感染させると、呼吸機能は低下して病状が悪化しますが、そこに睡眠を誘導する作用を持つ「メラトニン」というホルモンを注射すると、体の免疫の暴走が抑えられ、病状の回復につながることが確認されたのです。

 メラトニンは眠りのリズムを正常に保つホルモンですが、それ以外に炎症を抑えるような働きも持っているのです。これはまだ動物実験のデータなので、そのまま人間に適応することはできませんが、よく眠っていることは、それだけで感染症の回復を促す効果があるのかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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