医者も知らない医学の新常識

「プラスチック」が動脈硬化を引き起こす? NEJMで研究報告

マイクロプラスチックの環境破壊は深刻(C)iStock

 近年、プラスチック製品の環境破壊が注目され、プラスチックの使用量を減らして環境への悪影響を減らそうという試みが広く行われています。ただ、これは自然などの環境への影響であって、自分の体には関係がないと、そう思っている方が多いと思います。プラスチックそのものが体に溜まって、健康への悪影響を起こすことは、通常はないと考えられていたからです。

 ところが……プラスチックが劣化して分解され、非常に微細なかけらのような状態になると、それが食品に混ざって胃腸から吸収されたり、空気中の微粒子となって呼吸で肺に取り込まれたり、皮膚から吸収されるという可能性が否定できません。

 こうした体に吸収されるリスクのあるプラスチックの細片のことを、その大きさにより「マイクロプラスチック」や「ナノプラスチック」と呼んでいます。今年のニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという一流の医学誌に発表された論文では、首の血管の動脈硬化部位を調査した結果が報告されています。動脈硬化で治療を受けた人の6割近くで、そこに細かい欠片となったプラスチックの成分が検出され、それが検出されなかった人と比較して、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気の発生が多かったのです。

 これはまだ研究レベルの結果ですが、プラスチックの健康影響をわれわれはより深刻に考えるべきかもしれません。

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事