上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

心筋梗塞を起こした後の心不全が急増しているのはなぜなのか

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 俳優の中尾彬さん(81歳)、振付師の真島茂樹さん(77歳)と、「心不全」による訃報が相次ぎました。

 高齢化が加速している日本では「心不全」の患者さんが急増していて、「心不全パンデミック」への警戒が呼びかけられています。心不全患者は毎年1万人ずつ増加しているというデータもあり、2030年には130万人に達するとみられているのです。

 これまで何度かお話ししたように、心不全は単一の病名ではなく、心臓の働き=ポンプ機能が徐々に低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなった病態を指します。

 息切れ、むくみ、疲れやすいといった症状が現れ、放置して慢性心不全になると、良くなったり悪くなったりを繰り返しながらだんだんと心機能が低下していき、場合によっては予期せぬ脳梗塞を発症したり、徐々に腎機能が悪化して血液透析に移行するなど、生活の質を低下させながら命を縮めてしまいます。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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