がんとは何か

<11>発がんの“ブレーキ役”を壊すには2つの遺伝子変異が必要

写真はイメージ(C)PIXTA

 クヌードソンは、①網膜芽細胞腫を引き起こすには1対の遺伝子の両方に変異があればがんになる確率が高い②家族性は既に片側に変異があるので、もう片方の遺伝子に変異があればがん化の確率が高くなる③散発性は両方に異変がなければがん化の可能性は少ないと考えた。網膜芽細胞腫のために考えられたこの仮説はツーヒット仮説と呼ばれ、後にその正しさを証明する遺伝子が特定された。Rb遺伝子と名付けられ、世界で初めて発見されたがん抑制遺伝子となった。

 では、このRb遺伝子はどのような働きをしているのか? 米国がん学会の会員で、最新のがん情報にも詳しい国際医療福祉大学病院内科学の一石英一郎教授が言う。

「Rb遺伝子からつくられたRBタンパクは、細胞分裂時に問題が起きたとき、細胞周期を止める働きをすることがわかっています。細胞周期を進めるために必要なE2Fと呼ばれる転写因子(遺伝子発現のスイッチ役)に抱きついて動きを止めるのです」

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