介護の現場

風呂は毎日でも入りたいけど支払いを思うと諦めています…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

“老老介護”――。介護される人が介護をするという社会現象が急速に進み、思わぬ事態を招いている。

 東京・下町にある300世帯ほどの都営住宅に、40年近く住んでいる古川利男さん(仮名、84歳)は、小さな町工場に勤めながら、苦労して2人の子供を育てた。

 その2人の子供たちも親元を離れて独立。二十数年前から、夫婦2人だけの生活になった。

「ご飯に味噌汁、納豆に卵といった2、3品のおかず。そんな毎日の簡単な朝食や夕飯は、妻(83歳)か私か、その日、元気な方が作るようにしています」(古川さん)

 お互いに長く激痛が走る膝痛や、重い腰痛を抱えており、もはや単独で風呂に入ることや、外に買い物にも行けないほどの老体になった。朝方、腰を折って顔を洗うことにも難儀している。

 都心に世帯を構える2人の子供が、顔を見せる回数は年に1度か2度。親子の関係はそれほど悪くはないが、子供たちも、自分たちの生活を守ることで精いっぱいのようだ。

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