天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

先天性心疾患の手術痕が不整脈の原因

 遺伝とはほとんど関係がなく、年間約1万人、100人に1人の割合で、こうした先天性心疾患を持った赤ちゃんが生まれています。

 それでも先天性心疾患の分野において、日本は世界でもトップレベルの治療成績をあげているため、幼い頃に手術を受け、その後は長期にわたって何の問題もなく生活を続けられる人がたくさんいるのです。

 ただし、先天性心疾患で手術を受けたことがある人は、加齢とともに不整脈や弁膜症などの新たな心臓病が出現することが知られています。個々の状態によって異なりますが、新生児期(生後28日以内)から学童期(生後6~12年)ぐらいまでの時期に手術を受けた人は、術後30年くらい経って血圧の負荷が増える年齢になると、不整脈を起こしやすくなり、軽度の弁膜症も重症化するのです。

 特に不整脈については、子供の頃に受けた手術がかなり関係しています。先天性心疾患の手術は、心房からアプローチする場合がほとんどです。まず心房にメスを入れ、病変部を処置してから縫合します。切ってから縫い合わせるということは「痕が残る」ということです。心房を縫った箇所はかさぶたが残ったような状態になり、そこがいずれ不整脈の原因になるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。