天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

いきなりペースメーカーを勧める病院は疑わしい

 病院のホームページなどで治療実績を確認し、小規模な施設なのに異常な多さでペースメーカーの埋め込みを行っているところは注意してください。ペースメーカーだけでなく、カテーテルアブレーションやホルター心電図検査の施行件数をしっかりチェックしてから受診しましょう。治療に疑問がある場合は、セカンドオピニオンを受けることをお勧めします。

 心房細動の治療には、外科手術=メイズ手術という方法もあります。ただし、対象になるのは、不整脈が原因で反復性の脳梗塞を起こしたケースや、不整脈にプラスして心臓に他の病気がある場合になるのが一般的です。心房細動に加え、心臓弁膜症や冠動脈疾患など、心臓の中に修復しなくてはならないような病気がある時に、その病気の手術+メイズ手術を行います。これに該当するのは、心房細動の患者さん全体の1%もいないといわれています。

 メイズ手術は、心房の筋肉を一度切り刻んでから修復することにより、心房細動の伝導を防いで頻拍を起こりにくくする手術です。治癒率は不整脈が起こっていた期間や心臓の状態によって異なりますが、一般的には80%程度の患者さんの心房細動が完治します。

 とはいえ、心房細動だけでメイズ手術が行われるケースはまずありません。あくまでも、段階を踏んだ治療に効果がなかった際のオプションと考えてください。

3 / 3 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。