天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

段階を踏んだ治療で見落としをなくす

 投薬の他には、カテーテルアブレーション(カテーテル焼灼術)という治療法があります。太ももや肘からカテーテルを挿入し、不整脈の原因となっている部分に高周波の電気を流して焼き切る方法です。この治療に慣れている医師が行えば、成功率は90%以上といわれています。

 また、投薬で心房細動が治まらない場合は、カウンターショック(電気的除細動)という治療も行われます。心臓に直接電気刺激を加えて心房細動を停止させる方法です。この治療は、心臓のもともとのペースメーカー機能がキチンと働くかどうかを確認するための診断的治療でもあります。カウンターショックをかけても自分の脈拍がしっかり出てこない患者さんは「洞不全症候群」と診断され、次の段階であるペースメーカーを埋め込む治療の対象になってきます。

 ご質問にあるように、カテーテルアブレーションやカウンターショックを何度も時間をかけて丁寧に行っているのは、見落としがないようにするためです。しっかりと手順を踏んだ誠実な治療をしているといえます。そうした病院なら、患者さんも安心して治療を受けられます。担当医が下した「投薬治療を続ける」という判断も信頼していいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。