天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本の手術はムダが非常に多い

 まず、インドではできる限り無駄を省いた医療が行われています。手術の際の人員の配置も必要最小限に抑えられていましたし、手術機器もなるべく再利用して有効活用しようという意識が徹底していました。

 現在の日本では、手術の際に使う機器は使い捨てのものが非常に多い。メスもそうですし、吸引などで使うチューブ類もそうです。

 しかし、ほんの20年くらい前までは、日本も同じように手術機器を再利用していたのです。

 たとえば、いまのメスはT字カミソリの替え刃のように刃先を毎回交換し、持ち手部分はそのまま消毒して使うタイプが主流ですが、かつては同じメスを消毒して研いで使っていました。しっかり滅菌処理すれば再利用できる手術機器はたくさんありますし、それで問題も起こらないのです。

 それが、いつの頃からか医療界全体の考え方が欧米化していき、使い捨てが主流になりました。「1回使った手術機器を再利用するのは感染症のリスクがある」と喧伝されれば、そうした方向に流れるのは当然でしょう。しかし、年々、膨れ上がり続ける医療費が大きな問題になっているいまこそ、われわれは原点に立ち返るべきなのです。

2 / 3 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。