かつてはそれで十分に安全な手術が行えていた。それで患者さんも幸せだった。そうした過去の医療に立ち返りながら、現代の科学や技術を有効活用して組み合わせていけばいい。滅菌ひとつとっても、いまは昔よりはるかに進歩していますし、定期的な第三者評価・点検による再滅菌・再利用は国際的にも認められているのです。安全の確認と併せて無駄をひとつひとつ見直していけば、医療費の大幅な削減につながります。同時に、より洗練された医療が実現できると考えています。
日本の病院は、手術機器にお金をかけていますし、その質も非常に高いといえます。ただ、裕福で満たされた状況の中で手術を行っていると、見えなくなってくる部分がある。必ずしも、最新のエビデンス(科学的根拠)や技術を追いかけ、北米の医療が目指すようなハイテク医療ばかりにとらわれる必要はありません。かつての医療を見直しつつ、努力と創意工夫を重ねれば、格調の高い医療を実現できる可能性があるのです。
インドの病院でそんなことを考えさせられました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」