天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

日本は入院日数を短縮すべき

 日本の病院はベッド数が多すぎる。今年2月にインドの病院を視察した際、改めてそう思わされました。2013年のOECDヘルスデータによれば、日本の人口1000人当たりの病床数は「13.4床」で世界主要40カ国の中で突出して多い。一方、インドは「0.8床」ですから、比べようもないほど圧倒的な差があります。

 そのため、インドの病院では、「できる限り効率よく患者さんを回転させ、本当に入院が必要な患者さんにベッドを使ってもらう」という意識が徹底されていました。

 たとえば、インドでは手術後の平均入院日数は5日です。日本は短い施設でも平均10日ほどですから、半分の期間で患者さんを退院させているのです。これは、退院後、患者さんにはそれぞれのホームドクター=かかりつけ医のところに通院してもらうという病院の役割分担がはっきりしているからできることです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。