目の衰えが引き金になり、手術から引退する外科医は少なくありません。私の恩師のひとりも、乱視の進行で心臓手術の第一線を退いています。
私も42歳を越えたあたりから調節力の低下を自覚し、48歳から暗いと見えにくいという症状に変わりました。いわゆる老眼です。
もともと強度の近視で、ずっとコンタクトレンズをつけていたところに老眼が重なったため、手術の時、ピントを合わせるのに苦労しました。中心視力を上げると、手元の手術針などの細かいものが見えにくくなってしまう。逆に視力を手元に合わせると、肝心の中心がぼやけてしまうという状態でした。
「なんとなく見えにくいな」と感じると手術中の確認動作が増えて時間がかかるようになります。もちろん、患者さんに影響を及ぼすほどではありませんが、自分の中で0コンマ何ミリ以下の精度がズレてきていることを自覚するようになりました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」