近年、だんだんと増えてきているのが悪性腫瘍、つまり「がん」を抱えながら心臓手術を受ける患者さんです。がんの治療を受けるために精密検査したところ、心臓の状態が悪かったというケースは少なくありません。
かつてなら、両方の病気が発覚した時点で「残念ながら、がんも心臓もあきらめてください」という選択をせざるを得ませんでした。しかし、今はがんの治療にできるだけ影響を及ぼさないような心臓手術ができるようになりました。
しかも、ほんの少し前までは「手術すれば治せるがん」の患者さんしか手術の対象になりませんでしたが、今はほとんどのがんが対象になります。
抗がん剤などの化学療法が進歩したことで、仮にがんの手術を受けなくても、何年も生きていけるようになったからです。抗がん剤の治療を受けるために、まず心臓を治すという場合もあります。がんが発病してから心臓手術に回ってこないケースは、白血病と進行膵臓がんぐらいです。ただ、膵臓がんでも早期の患者さんなら心臓手術を先行することがあり、先日も同様の患者さんを手術しました。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」