以前、弁膜症の手術をした当時70歳の男性患者さんがいました。それまでは、心臓に電気刺激を与えて鼓動を促すペースメーカーが植え込まれていたのですが、弁の交換とあわせてペースメーカーを取り外し、心房細動を治すメイズ手術も行って、規則正しい脈拍が戻りました。
3年後、その患者さんがわざわざ挨拶をしに来てくれたのですが、幼い子供を連れていました。思わず「お孫さんですか?」と聞いてしまいそうでしたが、驚いたことにご自身の子供だといいます。手術後に再婚して、子宝に恵まれたというのです。心臓が元気になったからこそ、夜の生活も取り戻そうという気持ちになったのでしょう。
手術を受けた後、海外旅行で16カ国を回ったという方もいらっしゃいました。心臓病の患者さんは、常に「心臓にアクシデントが起こるんじゃないか……」という不安を抱えていて、そのストレスが行動を抑制しています。手術によって不安が取り除かれると、やりたかったことをやってみようという気力が湧いてくるのです。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」