日本には、対人口比で見ると心臓外科医が十分すぎるほどたくさんいます。ただ、その多くは世界水準の手術スピードに到達していませんし、レベルのバラつきがひどいのが現状です。
リスクが低い患者さんに対する手術については、日本も外国もそれほど差はありません。むしろ、日本の手術の方が精度は高いといえます。心臓外科医の中でも、比較的レベルが高い上級者が手術をしている割合が多いからです。逆に外国では、簡単な手術はレジデント(研修医)や若い医師が担当するケースが多いため、一定の割合でエラーが出てくるのです。
ところが、ハイリスクな手術になってくると、日本の心臓外科医は経験が少なく、その分だけ稚拙な対応をとる場合が多いように思います。たとえば、心臓の再手術が必要になったとき、2回目の手術でも、1回目の手術と同じコンディションで終わらせるのがベストです。しかし、2回目の手術には、1回目の手術によって生じた癒着や、手術の際に使用する血管などの材料が限られてしまうといった“遺恨”が残っています。再び傷を開くと、どうしても大出血が避けられないというケースもある。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」