独白 愉快な“病人”たち

元俳優 山本陽一さん(45) 劇症心筋炎 ㊤

山本陽一さん(C)日刊ゲンダイ

 一番大きな酸素マスクに替えても苦しかった。隣のベッドでは心電図のモニターが「ピー……」と鳴り、看護師さんたちがバタバタしたかと思ったら、隣のベッドが霊安室に向かう……。「次は自分かな」と朦朧としながら考えていました。

 後で聞いたのですが、僕のベッドの死角には心停止した時の電気ショックの機械と、死んだ時に体を拭くためのおしぼりが準備されていたそうです。

 周りの様子も覚えていたところを見ると、ICUに入って半日ぐらいは意識があったんだと思います。その後、鎮静剤を入れてから5日は昏睡状態でした。昏睡状態の時は動くというか暴れるらしく、全身ベッドに縛りつけられていたそうです。見舞いに来た姉は「機械から顔が出ていた」と言っていました。

 僕の心臓は半分以上細胞が死んでいて、人工心肺にする一歩手前。もし、人工心肺にすると1000万円以上もかかる。でも、植物人間でも何でも、僕が生きてくれるためならと、母と妻は人工心肺をお願いする覚悟でいたそうです。たいして稼げない大黒柱で、僕自身は「だったら死なせてくれ」って思いましたが。

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