結論からいうと、放射線治療のひとつ、陽子線治療を提案しましたが、当時の文太さんのようなステージ2の膀胱がんは手術による全摘が主流で、標準治療になっています。ステージ1の5年生存率は94%、ステージ2は87%と治療成績は決して悪くはありませんが、“袋”を着けずに膀胱を温存して治した人はレアケースといえます。
治療から5年後、「がんサポート」という雑誌で対談したとき、文太さんは「こんないい治療がどうして普及しないのかね」と漏らしていたことが、医療の実態を反映していると思います。
泌尿器科医は外科医ですから、手術するのが仕事。当初、手術に気持ちが傾いた文太さんは「手術以外の説明を受けていない」とおっしゃっていましたが、そういう説明がなされる背景には、こんな事情もあります。
しかし、読者の皆さん、心配ありません。治療法次第で、膀胱は温存できるし、そういう治療法を手掛けている医師も確実にいます。
Dr.中川のみんなで越えるがんの壁