やがて、歩行困難、排泄、食事、入浴、脱衣の補助まで妻の介護が必要になった。深夜でも、「トイレ!」の大声で起こされる24時間の介護態勢である。
「お父さん、私はもう限界よ。義母さんを老人ホームに入れましょう」
妻の要求に対し、笹本さんは自分の母親という負い目もあって、自宅から10キロ程度にある老人ホームを探し始めた。
有料老人ホームはすぐに見つかった。だが、笹本さんの年金ではとても賄えない。所轄の区役所などに連絡し、「特別養護老人ホーム」の情報を集めた。
富さんは年齢的に問題なく、「要介護5」の認定も受けている。入所の資格は十分だったが、どこの特養ホームを訪ねても20人、30人待ち、あるいは1年待ちという返事だった。
途方に暮れた笹本さんに、アルバイト先の同僚がこんな体験済みの知恵を与えてくれた。
介護の現場