そこで最近の変化のみに注目してみると、やはり年齢調整罹患率は「2000年前後から増加傾向」(国立がん研究センター)とされています。生命保険会社もそれを積極的に引用しています。
ところが大阪府立成人病センターのホームページには、逆の傾向を示すグラフが載っています。しかも「年齢調整をしてみると、がんの罹患率、死亡率は減少していることがわかります」と書かれているのです。どちらが正しいのでしょう。
実はアメリカを含む多くの先進国では、がんの年齢調整罹患率が頭打ち、ないし減少傾向に転じていることが、医療界ではよく知られています。
喫煙率の低下や肥満対策などが、がんの予防に効いているようです。ですから日本でも、すでに低下し始めていると考えるほうが、むしろ合理的だと思われます。
(医療ジャーナリスト・やなぎひさし)
医療用語基礎知識