どうなる! 日本の医療

TPP大筋合意 庶民は最新治療を受けられなくなる

大筋合意を自民党内で説明する甘利TPP担当相(C)日刊ゲンダイ

 それをカバーするため、今後は、高額な自由診療費用を支払うための、実費支払い型の医療保険が海外からドッと流入するという。最新治療は高額保険料を支払えない庶民には高根の花になる。

「米国発の手術法は“使用料”を支払わなければ日本で手術できなくなる可能性が高くなります。日本は米国の部品関税の撤廃などで自動車産業が大きなメリットを得る代わりに、医療を米国に売ったも同然です」

 怖いのは最先端医療が受けられなくなる可能性が高まることだけではない。病気の予防に力を発揮してきた食の安全に関するさまざまなルールもなし崩しになる可能性があるという。

「TPP合意で多くの食品の関税が撤廃になり、海外から安全とはいえないものがドッと入ってくるのは間違いありません。ただでさえ、輸入食品の検疫を行う食品衛生監視員が少ないのに、検疫量が増えるのですから、チェックが甘くなる危険性が高まります。しかも、今後は48時間以内に通関を終える必要が出てきます。そうなると、食品安全基準の規制を大幅に緩和せざるを得ず、輸入食品の安全性に重大な問題が生じる恐れがあるのです」(食品の輸入に詳しい商社関係者)

 日本の安全はいよいよ崖っぷちだ。

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村吉健

村吉健

地方紙新聞社記者を経てフリーに転身。取材を通じて永田町・霞が関に厚い人脈を築く。当初は主に政治分野の取材が多かったが歴代厚労相取材などを経て、医療分野にも造詣を深める。医療では個々の病気治療法や病院取材も数多く執筆しているが、それ以上に今の現代日本の医療制度問題や医療システム内の問題点などにも鋭く切り込む。現在、夕刊紙、週刊誌、月刊誌などで活躍中。