薬に頼らないこころの健康法Q&A

サービス残業している人は受けられない!?

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 ストレスチェック制度が始まっても、今度は「調査票に正直に書きづらい」雰囲気がおのずとできあがって、結局、制度が機能しない可能性もあります。

 そもそも、今回、ストレスチェック制度が導入された背景には、2006年4月施行の改正労働安全衛生法第66条の8の「面接指導等」と呼ばれる条文が、あまり機能しなかった事情があります。この条文は、長時間労働による疲労の蓄積が認められる場合の、事業者側の安全配慮義務を記したものです。事業者は時間外労働が1カ月100時間を超えると労働者に対して医師面接を行わなければなりません。時間外労働が80時間を超えるが100時間に達していない場合は、強制ではなく、努力義務とされています。

 しかし、企業によっては、30時間残業したとみなして定額の残業代を支払い、あとはカットしているところもあるでしょう。それ以上に残業した場合は、会社の建前としては労働者の自発的な労働であって、使用者の指示・命令によってなされたものとはいえないので、時間外労働とは認めないということになります。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。