弟夫婦はむろん、妹夫婦も了承し、生家の土地・建物の所有権は弟の名義に移った。
その後、純一さんは年に一度ぐらい、生家に帰宅し、時々電話もかけて、母親の近況を尋ねていた。
ところが2年ほど前から生家に電話をかけても、弟夫婦は「母は体を壊して病院に入院している」と言うばかりで要領を得ない。「母は留守」という返事が2、3回続いたことから、たまりかねて見舞いかたがた生家を訪ねた。
弟に入院先を聞くと、「実は母親を特別養護老人ホームに入居させた」という。
“母は介護士が必要になるほど老化してしまったのか”─―。弟夫婦を問いただすと、「少し認知症になりかけているし、足腰も急に弱くなって、心配で家に一人では置けなくなったから」と説明した。
純一さんが特別養護老人ホームに母親を訪ねると、まだしっかりしていた。会話も不自然さはない。着替えなど身の回りの世話やトイレに行く時も、介護士を必要としないほど元気だった。
介護の現場