独白 愉快な“病人”たち

作家 荻野アンナさん (57) 大腸がん ㊤

(C)日刊ゲンダイ

 手術は5月末。腹腔鏡か開腹のどちらにするかと聞かれ、担当医の症例が多い開腹を選び、「バッサリやってください」と20センチほど切除しました。

 ところが、術後もお構いなしで、母が「アンナ~!」と呼びつける。当時、母はたばこを吸っていて、毎日院外の喫煙所まで連れていかなければならなかったんです。

 片手で母の車いすを押し、片手で自分の点滴棒を持ってカラカラ。もう力ワザです。院内で点滴棒を引きずって駆け回っているのは、私だけ。おまけに、術後2日目から、口述筆記で連載も落とさずこなしていました。

 それらのおかげか、開腹手術後の合併症として言われていた腸の癒着も起こらず、治りは早かった。開腹したところの縫い目はきれいで、見舞客に無理やり見せて自慢しましたよ。

 それにしても、自分のこととなると、手術も治療も一連のプロセスが面白い。手術の麻酔前、禁止されていた水をガブガブ飲んでしまったことを思い出し、医師に謝りつつも「水に流してください」なんてダジャレを炸裂。医師には聞き流されましたが……。手術を終えた後、意識がもうろうとした中でいろいろとメモを取りましたよ。文字が読み取れず、書いたこと全てを判別できないのが残念なんですが。

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