医療数字のカラクリ

余命宣告は数字の希望の側面を照らすことにある

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 生存率の数字のカラクリについて長々と書いてきましたが、結局のところ「個別の患者さんがどうなるかはよくわからない」ということだけがハッキリしたような状況です。

 進行がんの行く末について、「6カ月後の生存率は50%です」と言ってみたところで、それが個別の患者さんにはほとんど当てはまらない。そんな数字で説明すること自体が間違っているのかもしれません。

「6カ月以内に50%の人は亡くなります」などと説明しても、患者さん側からすれば、「そんな私に似た患者での平均値が知りたいわけじゃない。私自身がどうかを知りたいのだ」ということになりがちです。というより、そういう意見のほうが普通でしょう。「何年で何%なんてのは結局、訳がわからない。普通の人に比べればかなり早死にだってことがわかれば十分だ」という意見もあるでしょう。

 しかし、それでもなお私は数字で示すことの意味や希望について、考えないわけにはいきません。従来の研究結果を調べ、単に1年後に生きている可能性が「高い」「低い」というような大ざっぱなものでなく、6カ月以内に50%というような明確な数字で示すことの意味を大事にしたいのです。その数字は「6カ月後に50%は死んでいる」という絶望を表すだけではなく、「50%は6カ月以上生きる」という希望も示しています。

 そうした数字の希望の側面が見えるように、数字以外の何かを示していくのが、私たち医療者の大きな役割だと肝に銘じています。

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」院長、「CMECジャーナルクラブ」編集長。自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、東大医学教育国際協力研究センター学外客員研究員。臨床研究適正評価教育機構理事。7月末に「検診や治療に疑問を感じている方! 医療の現実、教えますから広めてください!!」(ライフサイエンス出版)を出すなど著書多数。