薬に頼らないこころの健康法Q&A

成績はいいが、高度な装置を扱えない高専生徒への教え方

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 精神科医の立場から推測するに、この生徒さんの場合、「宣言的記憶」を「手続き記憶」に変換することが苦手なのではないでしょうか。どういうことか説明しましょう。

 人の記憶には、宣言的記憶と手続き記憶があります。頭で理解するのが前者、体で理解するのが後者だと大ざっぱに考えてください。

 学校の授業でいえば、理科・社会の授業で習う知識は前者、技術・家庭科で習得するものづくり、音楽の授業で習う楽器の演奏などは後者に相当します。

 すべての人がこれら2つの種類の知識を持っているわけですが、両者の知識を相互に変換することは、人によっては難しいものがあります。言葉で説明して理解することと、実際の行動で表現することとは別です。自転車の乗り方を説明できても、自転車に乗れるとは限りません。自転車に乗れる人でも、乗り方を言葉で説明できるとは限らないのです。

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井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。