薬に頼らないこころの健康法Q&A

不合格がわかっているのに難関校を受けるべきか

井原裕 独協医科大学越谷病院こころの診療科教授(C)日刊ゲンダイ

 私の印象では、夏ごろからの流れをみると、Q高校は受けた方がいいと思います。15の春は、多くの人にとって人生で最初の試練の場です。受験は勝負事ですから、勝者もいれば、敗者もいます。でも、どちらにしても受験は人生勉強の場。「負け戦」を経験することも、また勉強です。

 人生には負け戦とわかっていても、戦わなければならないことはあります。大人になってどこかの会社に就職して、仕事を割り振られる立場になると、誰がやっても失敗する仕事が自分にまわってくることがあるのです。

「中学の国語の時間に習った『火中の栗を拾う』とはこのことだったのか」と思えるような経験です。誰かがやらなければいけない仕事ですから、結局はイヤイヤやらされる羽目になる。そして、予想通り失敗して、皆から非難される。

「この仕事、俺には無理だって言ったじゃないか」

2 / 4 ページ

井原裕

井原裕

東北大学医学部卒。自治医科大学大学院博士課程修了。ケンブリッジ大学大学院博士号取得。順天堂大学医学部准教授を経て、08年より現職。専門は精神療法学、精神病理学、司法精神医学など。「生活習慣病としてのうつ病」「思春期の精神科面接ライブ こころの診療室から」「うつの8割に薬は無意味」など著書多数。